※R-18 お願いだから鳴らないで、時よ止まって、と、今まで何度お願いしたことだろう。悟の願いもむなしく、いつもと同じようにこの学校に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。 「悟、この後作文のプリント先生のところに持ってこいよ」 出してないのお前だけだぞー、と帰る準備に励んだり中にはすでに部屋を飛び出している生徒もいるクラスで、八代は叫んだ。 すぐに返事ができないでいると、気にする様子もなくそのまますぐに八代は教室を出て行ってしまった。 「おい悟、先生行っちゃったぞ」 声をかけられ、振り向く先にいたのはカズだ。 「着いて行ってやるからこのまま帰りに出しにいこーぜ」 「悟あのプリントまだ出してなかったのか?」 いつも帰る準備が僕たちの中で一番早い賢也はカズと違って早くも鞄を背負っている。手に持つ本は、今日の朝読んでいたものとすでに違っていた。賢也は本を読み終わるのもすごく早い。 「ごめん、僕まだあのプリント全部書いてないんだ。だから先帰っててよ」 「それは大丈夫だけど」 「珍しいね、悟くんが提出遅いなんて」 賢也がなんだか不安そうに言ったけれど、その言葉は広美にかき消される。 「じゃあ、俺らは先にアジト行ってるから、悟も早く来いよ!」 じゃーな!と、騒がしく去っていく友人達の背中を眺め、小さくため息が漏れた。放課後。 机の中のファイルや教科書を取り出して、持ち帰る物以外は机の中にまたしまう。持ち帰る物を鞄に入れたところでさぁどうしようと考えた。 本当はプリントはもう書き上げていて、しまってある。指定された時間内に書き終わり、みんなと一緒に提出することだってできた。でも、そうできない理由があった。誰にも言えない理由。 教室でだらだらとしている人、友人とのおしゃべりを楽しんでいる人、宿題を終わらそうと励む人、そんなクラスメイトたちを全員見送り、悟は教室を出た。慣れた足取りで職員室と反対の方向、校舎の二階の真ん中の塔、一番奥の理科室に向かう。この調子だと、今日はみんなの元へは向かえないかもしれないな。 静かに扉を開けたら、部屋の奥、夕日に照らされたその人がいた。 「待ってたよ、悟」 彼の瞳も夕日みたいにそこにあった。 八代が悟の眼前でスラックスのベルトを外して、前を寛げる。たったそれだけの動作が永遠にも思える長い時間に感じて、まだ何にも始まっていないのに喉の奥が詰まったような閉塞感がした。 「ほら悟」 急かされている。でも、この両腕は言うことを聞かず、重くぶらさがったままだ。きっと脳が拒否しているから動かしようがないんだ。 八代はすこし背をかがませて、悟の右手をとった。その手は無機物のように冷たくて、ぞっとした。もしかしてこの手はただの飾り物で、人間の一部ではないのかもしれないと、そう思うほどに。 「悟、僕はいつまでも待つつもりでいるよ。だから抵抗するのは時間の無駄じゃないかなぁ?」 顔を見上げなくても、八代の余裕綽々な声色で彼が楽しんでいることがわかってしまう。まるで僕らのクラスで算数の授業をしているときみたいにかんたんに、僕に問いかけてくる。いや、八代は問いかけてなんかいないし、僕に選択の余地を与える気もない。僕だってこんなこと、無駄な抵抗だってことくらいわかっている。 いつまでも手に触れられているのが心地悪くて、しょうがなく中途半端に下ろされて放置されていたチャックを一番下まで下ろした。ボタンを外し、あとは下着一枚。下着くらい自分で下げてくれまいかと望んだけれど、そんな思い通じるわけもなく、さっさと終わらせたいという一心で一気に引き下げた。 すぐ目の前にあらわれた、八代のグロテスクなそれ。 父親のいない家庭で育ったので、悟は大人の性器をまじまじと見るのは初めてだった。大人のそれなんて、自分のAVかで見るのが初めてではないかと思っていたのに。悲しくもその予想は裏切られた。 僕らのよりも格段に大きくて、赤黒くて、性器の周りには陰毛が茂っている。おどろおどろしい、というのがぴったりの表現だ。しげしげ眺めていると頭上から声が降ってきた。 「こういうことするのって初めてだよな、悟。まずは舌の先で舐めてみて」 いつもの僕であったら、初めてにきまってるだろ、とひとつそんな小言でも言いたいところだったけれど、今はそんなこと言える元気も残っていない。 八代の指示通り、舌の先で性器の先を舐めた。少ししょっぱくて、顔を近づけるとにおいがするのもわかる。むわっとした男らしいにおい。続けざまに、カリやその周辺をペロペロと、まるで猫がミルクを飲むみたいに舐める。 「うん、いいねその調子」 声がして、舐めるのをやめ見上げると、この性器の持ち主が微笑んでいた。 「次は裏を舐めるんだ」 次も言われたとおりに、性器の裏筋を舐めた。当然だけど勝手がわからなくて、どうもたどたどしい。べろりと裏を舐めてやるとすこし反応したのを手の中で感じて驚いた。 「ふ、......っ......」 「そうそう。気持ちいいよ」 よくよく見てみると性器は下着を下ろしたときと違って勃ちあがっていた。八代が僕のフェラで快感を得ているのだと思うと、恐怖とも言い違いないそれが全身を駆け上って、僕は考えるのをやめた。 「じゃ、咥えてみようか」 言われるがまま、あんぐりと口を開けて性器を迎えいれる。 ほんの先の部分を入れただけでも思った以上の質量で、口内が苦しい。鈴口から溢れ出した先走りが舌の上に流れこんできたのがわかった。それは苦しさのせいで分泌の増えた唾液と口の中で混じりあった。 「ふ……ん……っ」 もっともっと、奥まで咥えると、とうとう口で息はできなくなった。息苦しさで涙も溢れ、目の端にたまっている。鼻息も荒く涙を流す僕は八代から見たらどれだけ不格好なんだろうと想像して少し可笑しくなった。 「えらいね、悟」 手持ち無沙汰だったのか八代は僕の髪を撫で始める。絡まった髪の毛をほどくように指ですくその行為が頭皮に響き、気持ちよさでぞくぞくした。涙を拭おうにも、もう両手を持ち上げる力もでない僕のかわりに八代は頬の涙をすうと拭い去った。口の中も髪も頬も、八代に全部犯されていて、ひどい快感だ。 「もっと奥まで……」 腰をつかってぐうっと性器を奥に押し込まれ、その圧迫感に喉の奥で声をあげた。明らかにペニスは膨らみ熱をもっているし、口の中は色んな液体でぐちゃぐちゃで不快感がすごい。 「んんっ、んぅ」 静止をかけるつもりで掴んだ八代の手に逆に握りこまれてしまいもうどうしようもない。指の先まで全身が敏感になっていて、八代の手に触れただけでぴくりと肩が震えた。 そして自分の酸素を求める荒い鼻息の合間に、八代の乱れた息の音がした。 「......うん、いいよ」 「......ん、ん、んっ」 「ねえ、悟、このまま口に出すのと顔に出すの、どっちがいい?」 どちらも冗談じゃない。でも性器を口に突っ込まれたままなので返事のしようがなかった。 「ン、ん.........」 前後に動く性器は口内の粘膜にぐりぐりと擦りつけられる。口の端からは何かの液体(何かというより全部だろう)が垂れだして汚いけど、もう何がなんだがわからなくて、とにかく気持ち良い。下腹のあたりがぐずっと疼くのがわかって自然と腰がゆれていた。 「......悟、だすよ」 ずるりと性器を口の中から抜かれて、そのまま幾度か擦れば、八代の呻きのような声がした。 気づけば、顔面にどろりと精液を散らされていた。 口の中も顔もべたべたするし、疲労と嫌悪感がどっと押し寄せる。 ふと見上げれば、あのねたりとした笑みが暗闇の中に見えて息を飲む。 「いい子だね、悟」 広い机にうつぶせにされ、下半身に身につけていた物は靴下以外を全て取り払われた。 「悟は優等生だなぁ」 「......」 「先生は次が楽しみだよ」 まだ次があるの、なんてそんな野暮なことは聞かない。 閉じた太ももの間、アナルのかわりのそこに性器がゆっくりと侵入してきた。潤滑油のかわりになっているカウパーや精液がぬるぬるとまとわりついて滑りを良くする。動かされるたび、悟と八代の大きさの異なる性器が重なった。 擬似セックスのような行為をしているという事実だけで、柔らかかった悟の性器は硬さを帯びていた。 八代は容赦なく、腰をぐいぐいと押し付けてくる。その動きに合わせて押しつぶされた声が漏れた。 「あっあっ、やしろぉっ......」 「しーっ、あんまり声出すとみんなに聞かれるぞ?」 言われ、慌てて手の甲を口に押し当てたが、その手どころか、全身から力が抜けていて役にたたない。 「ふっ......ふぅっ......んっ」 「さとる、ほら、もっとしめて、」 ぎゅうと外側から手のひらで太ももを締められて、二つの性器はより密着した。 八代が前から悟の性器を捕まえる。まだ小さい悟のそれをまるで小動物でも撫でるかのような手つきで柔らかく弄ばれ、自然と吐息のような声が出ていた。強い快感に、射精が迫っていることがわかり涙と涎がだらだら手の甲にまで溢れた。 「はぁっ、せんせい、だめっ、なんかくる......っ」 「それは”イく”って言うんだ、悟」 後ろから強く抱きしめられ、耳元で八代の低い声が鼓膜に鳴り響く。 言われるがまま、その言葉を小さな声で震えながら叫んでいた。 「だめ、イく、イく......」 抱きしめられたところで悟は、八代の体温があまりにも熱くて驚いた。さっきまであんなにも冷たい凍えたような手をしていたのに。よくよく思えば悟の性器をぐにぐにと弄ぶその手からも熱が伝わってくる。 「いっちゃう、せんせい......あ、あっ......」 「せんせいも、いくよ、悟......」 「ぅう......」 ギシッ、と机が軋めば、茶色の古びた床にどちらのものかわからない精液が飛び散る。 少しの間、二人の息だけが教室に吐き出されて、力が抜けた悟はぺたりと床に座り込んでしまった。先程まで抱きしめられていた感覚と気だるさが体にまとわりついていた。 八代は早くもスーツを整えて、ベルトを締めている。それをぼうっと眺めていると、どこから取り出したのか、ハンカチを差し出し八代は言った。 「悟、今度はちゃんと時間内にプリント出すようにな」 その時になって悟は初めて、プリントを机の中に忘れてしまったことを思い出した。 にこりと微笑んだその人から差し出されたそれを受け取ると、二人の手は触れ合った。 160419 |