※R-18





「スザク、今日は泊まっていくだろう?」
 ルルーシュのその瞳は偽りの色ではない。

 縦長のテーブルで向かい合い座る食事の途中である。ルルーシュはナイフとフォークを握りこどものように浮かしたポーズのままにこりと笑った。


 いつもルルーシュの家に泊まるときは、ルルーシュの後にシャワーを浴びる決まりになっていた。僕がシャワーを浴び浴室を出てルルーシュの部屋の扉を開けると、彼は決まって裸のままベッドに腰掛けていた。そうして部屋に入ったばかりの僕へおいでと言わんばかりにやさしく微笑みをむけるのだ。
 そして今日も”いつも”の手順を踏むように、ルルーシュがシャワーを浴び、交代で僕がシャワーを浴びる。ルルーシュの部屋に入る。彼はベッドに座っていた。もちろん裸で。

 内部に入り込むようなキスをして、キスをしながらふたりはベッドに沈みこんだ。それといっしょにピンと張っていた真っ白なシーツは汚く形が崩れる。久しぶりに触れる肌はそのシーツと同じくらい、陶器のように滑らかだ。まるで女の子みたい。でもその肌はまるで人のあたたかさを感じない。本当に陶器のように温度のない、息をしていない体。そんな肌に触れているのがなぜかすきだった。僕はいつだって体温を求めていると思っていたのに。ルルーシュの肌をまさぐって、時たまきもちのいいところを刺激して、キスをして。不慣れな手つきで行為を進めてゆく。
 僕は今までどんな手つきで、どんな唇で、どんな声で、ルルーシュとセックスしていたのだろう?思い出の中のそれはとても不鮮明だ。
 彼の、すでに熱く先走りを垂らしている性器を手のひらで包み込み撫でると、ルルーシュは静かに喘ぐ。徐々に硬さを増していくのが指先の感覚でわかった。ルルーシュが動物のように僕の唇を舐めキスを促すので、それに従って口を開き彼の舌を招いて息苦しいキスをした。下半身の快感が増したからか、舌の動きは覚束無いものになってゆき、最後はやっぱり僕が主導権を握らされている。これもルルーシュの策略なのかな、なんてぼうっと考えていた。ふぅふぅ、息なのか声なのかもはや曖昧な音がキスの合間にして、口周りに唾液を伝わせているルルーシュの顔はとてもいやらしい。性器をしごく手を早めると段々と顔は歪み、快楽に抗わないその姿。
 唇が離れて、スザク、と行き詰まった声で名前を呼べば瞬間、ルルーシュは僕の手に精液を吐き出し達してしまった。ふたりの間には吐息だけがある。そのまま、いやにゆっくりと触れ合うようなキスをはじめた。まるで恋人のように。いや、だった、のか。
「いつもと違って性急だな」
 どうしたんだ、と問いたげな声色をして、近距離で僕を見つめるルルーシュははたして僕の知っているいつものルルーシュなんだろうか。その瞳は美しさとともに危うさも持ち合わせている、パープルの、甘美な闇だ。
 だいたい、いつも、なんて言っているけれど、僕にとってはもう正確な日にちを思い出せないくらいの”いつも”だった。こうやって肌を触れ合わせるのなんて、一年振りくらいだろう。
 頭が混沌としていて何をするにも邪魔をしてくる。しかしそんな気持ちをよそに、ルルーシュの瞳と指先が早くしろと語っているので仕方なく、ベッドの脇に用意してあったローションを手にとった。

 そこから先のことはあまり覚えていない。しっかりとベッドに手も足もついていたし、ルルーシュの体温も感じることができていたはずなのに、体が中に浮いてしまったかのような頼りなさをずっと身にまとっていて、思考はどこにもなかった。ルルーシュの黒い後頭部と白い背中、それだけを目で捉えながらずっと腰をふる。こんな行為は愛あるセックスなんかじゃないよね。
 あれだけうだうだと考えていた癖に、ルルーシュが果てるとほぼ同時に僕は彼の中でイっていた。情けない。イきながら、こうして僕は彼とセックスするたびに僕を失っていくんだろうなぁと、果てしない絶望を感じていた。




説明書に従って正しく行ってください




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