ほんのりと夏の夕焼けに染まる道を歩いている。いまだに蝉は鳴きやむことをしらず、風が涼しげに吹く夕刻も真夏であることを思い知らされる。
少し先をゆく、二人の影を追いながら奉太郎は歩く。優雅にスカートを風に揺らしながら千反田えるもまた、彼に添うように歩いた。
「折木さん、やけましたね」
突然口を開いた彼女に目をやりながら自分の腕を持ち上げ確認すると、たしかに赤みがかっている。
「そういえば」
「折木さんは赤くなる体質なんですか?」
気になります、と言わんばかりの、しかしいつもよりは控えめにその瞳をきらきら揺らめかせながらえるは問うた。
「体質…というのもなんだが、まあ、そうだな」
言い放ちちらりと隣のえるを見ると、彼女もまた人に言えぬほどには顔まで真っ赤にやけ染まっていた。
「そういうお前も」
赤くなってるだろ、そう告げるとえるはほほえんで、わたしも昔からなんです、一度も黒くなったことがなくて、とそう恥ずかしそうにする。
確かに彼女が水着を着ていた際も、そういった服との境目のやけあとなどは見えなかった。あの水着と同じ、まっしろの からだ。
思い出して、奉太郎は急に沸騰したように(実際ボン、と音がなったような気もする)頭に熱が上がってどんどん顔が赤に染まっていくのが自分でもわかった。真夏の温度もそれを加熱させるように顔にまとわりついた。奉太郎がそれを振り払うようにぶんぶんと頭をふるのをえるは不思議そうに見つめて目をぱちくりとさせたている。ほんとうに小動物のようだ。
ひとつ、風が吹いて、顔の温度も二人の間の空気も一新させるように吹き抜けた。夏のそれではない、夕方のさらっとした心地よい肌触りだった。
だんだんと影も赤みを増して、日焼けした二人もますます赤く染められる。
「また、真っ赤にやけましょうね」
えるの黒髪がさらさらと揺れた。





#夕暮
110621

えるちゃんのかわいさいっぱい










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